チェンマイ独居老人の華麗なる生活1677
(#22懐かしき女優:花柳小菊)
不幸のほとんどは、 金でかたづけられる。
菊池寛 (作家)
今回も70〜80代の映画ファンならご存知の女優が登場。
でも花柳小菊ファンの人がどの位いらっしゃるやら。

☝ 山田五十鈴(左)とともに(1949年)
花柳小菊は本名・斎藤 芳子、 大正10年(1921年)2月に東京・京橋に生まれた。
尋常小学校を卒業後、 神楽坂の芸者の道へ → 小菊の名で半玉になる。
マキノ正博にスカウトされ1935年、 日活映画 「恋愛人名簿」 に主演。
芸名は妓籍のまま、 14歳で二枚目俳優の滝口新太郎とコンビで売り出され、 スターの道をまっしぐら。
但し14歳といっても子役ではなく、 大人の女性の役を演じた。
日活の年賀状用写真(1936年:昭.11)

☝ 左から黒田記代、 花柳小菊、 原みち子、 池 雅子。
時代劇出演も増え、 阪東妻三郎や片岡千恵蔵の相手役となる。


☝ 坂東妻三郎と共演。
1940年に日活を退社、 その後は新派の舞台出演が増える。
1940年(昭和15年)、 内務省の指示で芸能界に難題が....
「新興行取締規則」 が警視総監名で公布された。
芸能人は内務省が発行する技芸証(許可証)が必要になる。
「思想、 素行、 経歴その他不適当と認むる者」 は不許可に...
ここで花柳小菊(その時19歳)が引っ掛かった。
「俳優と芸者の二足ワラジは不適当なり」 の難癖だ。
面白いことに花柳小菊は何を考えたか、 芸者の方を選ぶ。
理由は分からぬが、 芸能人だと戦地慰問に行く可能性があるからか。
話は脱線するが、 この頃から政府の統制が厳しくなる。
内務省は芸名の中で、 不真面目、 不敬、 外国人と間違えやすいものの改名を指示。
仕方なく改名した芸能人には、
ディック・ミネ(歌手) → 三根耕一
藤原釜足(俳優) → 藤原鶏太(理由は藤原鎌足に関連か)
リーガル千太・万吉(漫才) → 柳家千太・万吉
ミス・ワカナ(漫才) → 玉松ワカナ
中村メイ(5月生まれでメイは本名) → 中村メイコ(俳優)
メイは敵性語だからダメという理由。
他には、 平和ラッパ(芸人)、 ミス・コロンビ ア(歌手)、 エミ・石河(松竹)、 南里コンパル(同) 、 尼リリス(日活)など。
不敬なものとしては、 園御幸(宝塚)、 御剣敬子(同)、 熱田みや子(日活)、 吉野みゆき(新興)に改名命令。
戦前の芸能人はこんな愚かな命令に従わざるを得なかった。
* *
花柳小菊は戦後も松竹、 東宝、 大映、 東映で大活躍。
1956年、 東映専属になる。

☝ 左は大友柳太郎。
脇役で多くの時代劇に出演したが、 時代劇ブームが去った1963年に東映を退社。
1968年の東映 「忍びの卍」 を最後に、 47歳で映画界を引退。
その後はテレビドラマ・舞台で活躍した。
1963年公開、 真田風雲録(予告編)で懐かしみましょう。

☟
https://www.youtube.com/watch?v=5xEaACeJJWc
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花柳小菊の結婚は1968年、 47歳の時で、 相手は当時50歳の中村竹弥。
まさに熟年結婚だが、 中村は離婚した後の再婚だった。
中村竹弥はテレビ時代劇の人気スターだった。
1953年のテレビ開局に伴い、歌舞伎からテレビ時代劇に進出。
今のTBSテレビの専属俳優となり、 「半七捕物帳」(1956年)に
主演。
以降、 「右門捕物帖」 「旗本退屈男」 「新選組始末記」 「丹下左膳」 など同局の人気ドラマに主演。
草創期のテレビ時代劇を代表する人気俳優となる。
1966年以降はTBSを離れ、 時代劇を中心に脇役として活躍。
1970年、 「大江戸捜査網」 に出演。
松平定信の命を受けた無役の旗本 「御前」 こと内藤勘解由は当り役となり、 1981年まで演じた。

名古屋・御優座の 「細川たかし公演」 に出演中の1990年1月に体調悪化、 同舞台を降板。
同年5月、 心不全のため死亡(享年71)。
彼の最期を看取った花柳小菊はその時69歳。
その後、彼女は未亡人として20年生きたが、 2011年1月、 心不全のため都内の病院で死去(享年89)。
* *
花柳小菊とて若い頃はいろいろ男出入りがあったようだ。
ある時期、 作家・川口松太郎に囲われていた。

☝ 若い頃の川口松太郎。
「古川ロッパ昭和日記」 の昭和24年10月に、 ロッパが川口松太郎と会い、 仕事の話をした後にこう書いている。
(川口は)三益愛子を捨てて、 花柳小菊と出来ていたのが近頃解消、 もとの鞘へ戻った由。
ちなみに川口松太郎は第1回目の直木賞作家。
昭和10年の36歳、 「鶴八鶴次郎」 と 「明治一代女」 で受賞。
野添ひとみ(女優)と結婚した俳優の川口浩(享年51)は、 松太郎と三益愛子の間に生まれた長男だ。
* *
昔は写真週刊誌もテレビのバラエティ番組もなかった。
今ならスキャンダルとしてメディアを賑わせたかも....
最近は、 ちょっと不倫しただけで叩かれる。
その原因に男の不実、 不甲斐なさもある。
手切れ金をたっぷり弾まず女をポイした俳優や政治家。
女性側からの告発で明るみに...そして男のイメージダウン。
女を物にしたかったら先ずお金。
そして別れる時には誠実な心と....
カネだ!
チェンマイって ホントいいですね! /span>