2020年09月27日

独居老人の生活2015(タクシー運転手)


チェンマイ独居老人の華麗なる生活2015(タクシー運転手)


  運転手って、

 無口な奴は不気味だし、 よくしゃべる奴は迷惑。

                                     筒井康隆 (作家)


安住孝史さん(83)はタクシー運転手を通算20年余り務め、 2016年に運転免許を返納した。

画家を志し、 大学の建築科を中退。 1970年に初個展。
消しゴムを使わない独自の技法で鉛筆画を描き続ける。

画文集に 「東京 夜の町角」 (河出書房新社)などある。

   pict-安住孝史タクシー.jpg 


安住さんのタクシー運転手時代のエピソードを聞くと、 これがまた
面白い。

今日はそんなタクシーストリーをどうぞ!
 (挿入の画は安住孝史氏の作品です)

(注) 安住さんの 「語り(エッセー)」 からジジイが抽出し、
    短縮するなど若干手を加えております。
                ☟

東京・日比谷交差点のところで男性に呼びとめられました。
行き先は 「帝国ホテル」、 その交差点から5分の距離。

念のため 「すぐそばですが」 と聞きますと、それはご存じとのこと。
そして、 乗るとすぐに初乗り料金を渡してくれました。

帝国ホテルの玄関に寄せますと、 ドアマンのお迎えです。
お客様は軽く会釈して入っていきました。

遠くから帰ってきたようにみせたい事情があったのかなとも思いましたが、 ただ見栄をはっただけかもしれません。

このようなタクシーの使い方もあるのかと、変に感心したのを覚えています。

               * *

JR御徒町駅のガード近くで男性が 「昭和通りに入って」 と乗ってこられました。

昭和通りまで100メートルくらいだったでしょうか。

びっくりしたのは、 入るとすぐに 「ここでいいよ」 と....
急に慌てたような様子になって降りていかれたことです。

後から考えると、 急いで駆けつけたようにみせる演出だったような気もしました。

               * *

東京・銀座で夜のお店の仕事がハネる時間帯のことです。
お客様を待っていると、 アベックが近づいてきました。

男性は見送りで、お店の女性と常連客の関係のようです。

男性は1万円札を僕に差し出し、
「運転手さん、中野まで送ってあげて。 おつりはこの女性にネ」

それで 「はい」 と返事をして走り出しますと、 女性が 「有楽町駅で止めて」 と言います。

有楽町駅まではワンメーターです。
1万円近いおつりを手に電車で帰宅すればお得と考えてのことでしょう。 

              * *

夜の銀座で乗ってきた男性のお客様、 行く先は 「霞ケ関」。
官庁街に向かって走り出すと 「高速に入って」 との指示です。

僕が戸惑っているのをみて、 男性はいたずらっぽく 「川越だよ」 とおっしゃしました。

聞くと東武東上線の川越の先にも 「霞ケ関」 があるとのこと。
僕はそれまで知らずにいたので勉強になりました。

      川越市の 「時の鐘」
pict-川越市の「時の鐘」(画・安住孝史氏).jpg



      曇りの日の川越市
pict-曇りの日の川越市(画・安住孝史氏).jpg

              * *

不思議だったのは、 JR西日暮里駅から 「東十条」 と言って乗ってきた中年男性の場合です。

「東十条のどの辺ですか」 と尋ねると 「駅」 とのこと。
京浜東北線なら西日暮里から東十条まで乗り換えなしで10分くらいです。

タクシーを走らせますと、 本当に東十条の駅前で 「ここでいい」 と降りていかれました。

電車の方がはるかに安く、 しかも速いのになぜだろうと、 これは今も謎のままです。

               * *

6月の第3日曜は「父の日」です。

この日に根津に近い不忍通りで 「観音裏まで」 と若い女性が乗ってきました。

観音裏は 「雷門」 で知られる浅草寺の北側エリアです。

途中で 「そこの洋菓子店で少し止まっていてください」 とのこと。
父の日なので父親にケーキを贈りたいということでした。

ほどなくして女性は 「お待ちどおさま」 と戻ってきました。
そして 「はい」 と言って、 僕に小さな箱を差し出します。

ケーキの入った箱だと直感しました。
びっくりして 「いいのですか」 と聞きますと 「どうぞ」 と笑顔です。

お父様のためのケーキのほかに、 僕にまで用意してくれたのです。
箱にはチョコレートケーキが入っていましたが、 その美味しさは、ちょっと涙が出るくらいでした。

ほんの小さな出来事だとしても、 その一粒の恵みが、 人生を明るく、愛(いと)おしいものにしてくれる。

そんなふうに感じています。

      夜の新橋駅西口
pict-夜の新橋駅西口(画・安住孝史氏).jpg

               * *

見てはいけないものを見てしまった、そんなこともあります。

JR鶯谷駅(東京)のホテル街周辺で信号待ちをしていたとき、
細い路地からアベックが出て来るのがバックミラーに映りました。

夜の10時頃、 案の定、男性にドアをたたかれました。
女性を先に降ろすのか、 先に乗り込んできた男性を見て、 心の中で 「あっ!」 と叫びました。

道で会えばあいさつを交わす程度ですが、 見知った顔です。
女性は知らない顔でした。

料金をもらう時、 帽子のひさしの下に顔を伏せるようにして、 僕だとわからないようにしました。

彼には奥さんも子どももいるのを知っていましたから。

ただ、もしかしたら、 彼は僕に気づいていたのかもしれませんね。

              * *

ある夜、上野駅前で 「浜松」 と言って、 乗って来たお客さまがいました。

「(都内の)浜松町ですか」 と聞き直すと、 ぶっきらぼうに 「静岡の浜松」 との返事。

遠すぎるので、 ほぼ半分の沼津駅までという約束で、 走り出しました。

沼津駅までとお願いしたのには理由がありました。
料金が高額、 こわもてのお客さまを乗せる際には、どうしても心配が先に立ちます。


沼津駅に着き道中ずっと眠っていたお客さまを起こしました。

するととても分厚いお札の束のため折り曲げられなくなった財布を取り出しました。

その時、 浜松市の知らない場所まで行かずによかったと思いました。
無造作に扱われる大金というのは目にしてしまうと怖いもの。

そういうおカネが、 どこかよくないもののように見えてしまうのは不思議です。

                * *

下町でお客さまを降ろした時のことです。

その男性は640円の料金を払うとき、 「細かい金ですまないねぇ」 と、 百円玉4枚と多くの十円玉を差し出しました。

下町ですから小銭での支払いは珍しいことではありません。
お客さまが立ち去った後で十円玉を数えると、 どうしても2枚足りません。

長く握りしめていたためか、 少し湿って温かでした。
単なる間違いなのか、 ごまかされたのか....

                * *

JR代々木駅近くで、 若い女性が乗ってきました。

「六本木に寄ってください。
 六本木で友達を拾って、赤坂に行きます」 とのこと。

「お友達はどのあたりで待っていますか」 と聞きますと 「六本木交差点を渡ったところで止まってください」 と言います。

停車すると 「すぐに連れてくるから待ってて...」 と下車。
長くは止めにくい通りでしたので、やきもきして待ちます。

3分、 4分……ちょっと外に出て辺りを見回してもみました。
見事、 乗り逃げにやられました。

               * *

夜11時すぎでしたが、 30代くらいの女性を住宅街の行き止まりにあるアパート前までお乗せしました。

その女性は 「部屋でお金を取ってくるから待ってて」 と降りたまま戻ってきません。

おかしいと思って車から出てみると、 アパートの横に小さな抜け道のような路地がありました。

その瞬間に 「やられた」 と思いました。

   pict-個人タクシー.jpg

                * *

これは同僚運転手の話です。

女性が未明に渋谷で 「忘れ物を取りに家に帰った後、 そのまま渋谷まで戻る」 といって乗ってきたそうです。

深夜料金での往復ですから、彼も悪くないと思ったといいます。

で、その女性は降りるとき、 デパートの紙袋を後部座席に置いていったので、 同僚も安心して待ったそうです。

ところが、いつまでたっても戻って来ません。
心配になって紙袋をのぞいてみると、 中にはクチャクチャに丸められた新聞紙が入っていたのです。

まさに 「やられた」 と思う瞬間です。

                * *

交差点まで来ると、若い女性のお客様から 「コンビニ」 の前で車を止めるようにいわれました。

お客様は 「こまかいお金がないから、 お店で買い物してくずしてきます」 とのこと。

それまでの会話で人柄に好感をもっていましたから、 心配はしていなかったのですが....

ちょっと驚きました。
女性は戻ってくると、 料金と一緒に缶コーヒーを手渡してくれたのです。

若い人のやさしい気遣いが嬉しかったのを覚えています。

              * *

その日は朝の5時半頃だった。

チェンマイ空港発の国内便に乗るため、 ジジイはアパートの前で頼んでおいたツクツクを待っていた。

しかし寝過ごしたのか、 約束の時間を過ぎても現れない。
たまたまソンテウ(流しのミニバス)が通りかかったので交渉。

100バーツで行くというので乗ることにしたが、 財布の中を見たらこまかいカネがない。

「1000バーツ札しかないけど、 お釣りはあるか?」

「Yes、 OK」 と運転手が即答。

乗り込んで5分程走ったところで停車し、 こう言った。

「そこで何か買って、 こまかくしてきてください」

ジジイはセブンイレブンに入り、 1000バーツ札でチューインガムを1つ買い、 そこからまた空港へ向かった。


運転手は釣銭を持っている...






そう思い込んだジジイが 浅はかだった。


チェンマイって ホントいいですね!




posted by チェンマイ華麗なる独居老人 at 13:52| Comment(0) | バラエティー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする