チェンマイ独居老人の華麗なる生活‐82(旬のモノ)
あはれ
秋風よ
情(こころ)あらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉(ゆふげ)に ひとり
さんまを食(く)らひて
思ひにふける と。 佐藤春夫 秋刀魚の歌
「秋刀魚の歌」の碑は、JR紀伊勝浦駅前に建てられている。
この那智勝浦町は、春夫の愛惜した佐藤家の屋敷「懸(けん)泉(せん)堂」のあった所。
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若い人がさんまと聞けば、直ぐに連想するのはこっちの方かも知れない。

明石家さんま、元々落語家のはずだが、高座で一席というのは聞いたことがない。
さんまが古典落語の代表的演目、「目黒のさんま」を上方風に演じれば面白いと思うのだが。
「目黒のさんま」
遠出で目黒に来た殿様が、 さんまという低級な魚(下魚)を偶然に村の女の調理で食べたら、これが実に美味かった。
後日殿様は再度さんまを所望、遠出ではないので家臣が殿様向きに骨など抜いて、丁寧に調理したさんまを出した。
ところがそれを殿様が食べたら不味かった、という滑稽噺。
殿様が周りの者に言う、「さんまは目黒に限る」がオチ。
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映画でもさんまを題名にした名作がある。
小津安二郎監督の『秋刀魚の味』(1962年松竹)。
父親役の笠智衆、結婚適齢期の娘役が岩下志麻、
小津監督(満60歳で没)の遺作となった。
「男やもめの父を一人にさせられない」と思う優しい娘、
「お父さんの事は構わず結婚しなさい」と言う父。

結局嫁入りする娘、最後の父との別れのシーンには涙が出た。
娘が畏(かしこ)まって「お父様、長い間お世話になりました」と別れの挨拶。
娘を嫁がせた父親の「老い」と「孤独」というテーマと共に描かれている。
この頃の岩下志麻は最高に美しい。
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独居老人が27歳の時に娘が生まれた。
ジジイにとての最初の子でそれも女の子、嬉しかった。
映画「秋刀魚の味」の岩下志麻の印象が強く、このような美しく優しい娘になるものと心底思っていた。
とんでもない現実。
気が強く我が儘で、父親に似ても似つかぬブス。
娘が27で結婚した時は天にも昇る気持ち、嬉しかった。
父親への最後の挨拶もなく、費用をケチって花嫁衣装を着ることもなく、休日で遊びに行くように家を出て行った。
ジジイにとっては厄払いの気持ち、安堵の思い。
(尚、挙式せず、後日レストランで両家親族だけの昼食会を開く)
秋刀魚の味、ほろ苦さなど全くなし、清々した。
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秋刀魚とあるから秋魚なのである。
近年冷凍モノが出回り、今では1年中食べられるようになった。
やはり旬の秋が最盛期、脂(あぶら)の乗ったさんまをジュウジュウ焼いて食べたいものだが・・・・。
炭火で焼くのが最高。 旨そうー。

と言う事で、この日のランチはその秋刀魚を食べに一人で行く。
店名「すし次郎」、場所は北タイ情報紙「Chao」の地図(F‐2)


おつまみにエノキ茸バター:45バーツ

さんま塩焼き:75バーツ
Beer Chang大瓶:70バーツ

仕上げは冷やし中華:75バーツ

店の女将かな?

日本は秋でもチェンマイは関係なし、旬のさんまはここでは贅沢。
冷凍で我慢、チョッとパサパサの感もあるがマイペンライ、これは旬の秋刀魚なんだと思い込み、食べてみると美味しいもの。
「旬のものは体に良い」と言われる。
さんまも同様でたんぱく質には、必須アミノ酸がすべて含まれているほか、脂肪は動脈硬化やそれに伴う血管疾患の予防にも効果的なんだとか。
こんな事まで考えて口にすれば余計に有難みが増してくる。
さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。 「秋刀魚の歌」
”さんまはチェンマイに限る”
独居老人、こんな感じでひとり寂しく食べてます。
女性はどうか?
チェンマイは美女の産地として名を轟かす。
ここなら40、50のオバさんも美人、いいねー、
やっぱし「女だけは旬に限る」
チェンマイって ホントいいですね!